先日、娘と一緒に映画『国宝』を観てきました。
とにかく面白い!と、みんなが口を揃えて言うので足を運んでみました。
3時間かぁ…長いな。足も疲れそうだなと心配はありましたが、そんなの吹き飛ぶほど集中して観ていました。
以下、多くのネタバレを含む感想なので、ぜひ鑑賞した後に読んでくださいね。
日本映画の歴史に刻まれる、美しく熱い、圧倒的傑作が誕生。
吉田修一自身が3年間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にし、書き上げた渾身作「国宝」。
任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄の50年を描いた壮大な一代記。
そんな「国宝」が、世界最高峰のスタッフ&キャストと奇跡のような集結を果たし、堂々の映画化。
公式HPより引用

映画「国宝」を観て感じたこと
作品の中には、私が想像もしていなかった足の切断シーンがありました。原作や前評判をほとんど見ないで行ったので、「まさかこんなシーンがあるとは!」という気持ちでした。
術後の俊介の姿を見たとき、私の足に幻肢痛のような痛みが走ります。
「イタタタ…」自分の術後を思い出すような痛みに、足を押さえる私を娘は心配そうに見ていました。
義足の私にとって、横浜流星さんが演じる歌舞伎役者「俊介」が、糖尿病で足を切断するシーンは、胸が締めつけられる思いでした。その姿はただの演技ではなく、自分の人生の一部のように感じられました。
そんな話を交えながら感想を書きたいと思います。
国宝級の俳優たちによる名演
吉沢亮さんと横浜流星さんの演技の素晴らしさはもちろんですが、吉沢さんが演じる喜久雄が曽根崎心中のお初役に抜擢されるシーンでは、その美しさと哀しみが伝わってきて涙が出そうになりました。横浜さんが演じる俊介の嫉妬と愛情も、羨望と祝福の気持ちが垣間見える人間の複雑な感情を上手に表現していました。
光と闇がそれぞれ入れ替わり交差する状態に、ひたすら私はハラハラしていました。
そしてとにかく、美しかった。芸術作品を見ているような気持ちになり、作品の凄さを伝えたけど言葉にならない感情。歌舞伎は日本の素晴らしい伝統であることを改めて知ることができました。
映画の舞台となる歌舞伎座や国立劇場の楽屋の描写について触れられていました。舞台裏の緊張感や役者同士の関係性、師匠や先輩とのやり取りまで描かれていて、足を運んで歌舞伎を観たいと思わされる作品でした。
役者が義足になるシーンに衝撃
映画を観ながら、「あぁ…これはつらそうな体勢だ」とか「転んでしまいそう」とヒヤヒヤしていました。でも、こうして義足の方が取り上げられることは、なんだか嬉しい気持ちになります。
私たちのような存在がどんな葛藤を経ているのか知ってもらえるからです。
義足で生活する私にとって、映画の中で俊介が足を切断しながらも舞台に立ち続ける姿は、ただの演技以上のものを感じさせました。彼の姿は、障害を持つ者としての葛藤や、舞台に立つことへの強い意志を象徴しているように思えました。
障害者になってもなお、舞台に立ちたいと必死になる俊介の姿に、私はとても背中を押されました。
義足だから「できない」と思っていたことも、誰かの手を借りたら叶うのかもしれない。俊介を支える喜久雄は、確実に愛情に満ちていて、俊介のために「演じさせてあげたい」気持ちが溢れていました。
両足まで失った俊介が「お初」を演じるシーン。義足の私が経験してきた日常の困難や、どうにか切断前と同じことがしたという気持ちと重なり、自然と涙がこぼれました。
親亡き後、承認欲求から自己実現へ
父親であり師匠でもある花井半二郎が亡くなった後、彼らは承認欲求ではない自己実現の段階に上がったように見えました。
最初は競い合うように生きていた二人が、父と師匠を亡くしたことでそれぞれの生き方が変わったと私は観ていて思いました。
常に厳しい目に見られていた二人は、その存在を失ったときどう感じたのか。それを想像しながら私は見入っていました。
父・半二郎が亡くなる場面から先は、「誰かに認められたい」ではなくて、「自分が何を残したいか」「どう生き切るか」という、もっと深い自己実現や使命感の領域だなと感じました。
大切な人を亡くす経験や、命の有限さに向き合うと、「どう生きるか」という想いにシフトする。さらに、半次郎に常に見られていた二人はやっと解放され、本当に自分が演じたいことが見えてきて、自己実現に至る。
『国宝』は、承認欲求を超えた「存在の美しさ」「生き切る強さ」を描いている作品だと思います。
映画「国宝」から得た勇気とメッセージ
映画『国宝』を観て改めて思ったのは、どんな状況でも自分の舞台で主役を演じる権利は自分にある、ということです。
どんな姿になっても演じ続ける。喜久雄と俊介が、それぞれのどん底に落ちたところがこの映画の見どころではないかと私は感じました。
どんな人間もずっとキラキラと輝けるものではない。人生は血の滲むような努力が必要なこともあるし、先の見えない失望を経験することもある。
誰もが落ちる可能性のある光と闇を丁寧に描いた素晴らしい作品でした。
そして、どんなに悪化した状況でも痛みに負けず、自分のしたいことを叶えるために一歩踏み出すことの大切さを伝えてくれる作品でした。前に進めなくなっているすべての人に観て欲しい。義足ママとしての視点から、そんなメッセージを込めたレビューを書きました。
この美しさは劇場で見るべき内容でした。胸が苦しくなるシーンが多いですが、これだけ絶賛される理由もとてもよくわかります。
素晴らしい作品を、ありがとうございました。


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